## ボッカチオのデカメロンの面白さ
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黒死病禍という絶望的な状況を背景に対照的な「生の謳歌」が描かれる面白さ
「デカメロン」は、14世紀半ばにヨーロッパを襲ったペスト(黒死病)の流行を背景に、フィレンツェ郊外の別荘に避難した10人の男女が10日間にわたって物語を語り合うという構成を持つ物語集です。
ペストは当時の人々にとって、治療法の見つからない、まさに「死」と隣り合わせの恐怖であり、フィレンツェの街は混乱と絶望に包まれていました。物語はそのような状況を描写するところから始まります。
しかし、別荘に避難した10人の男女は、物語を語り合うことで、恐怖や絶望から逃れようとします。彼らが語る物語は、恋愛、冒険、欺瞞、機知など、多岐にわたるテーマを扱い、ペスト禍の現実とは対照的な「生」へのエネルギーに満ち溢れています。
この「死」の影におびやかされる現実と、物語世界における「生」の輝きの対比が、「デカメロン」の大きな魅力の一つと言えるでしょう。読者は、ペスト禍という極限状況の中で語られる物語の数々を通して、人間の逞しさ、生きる喜び、そして皮肉やユーモアをも感じ取ることができるのです。
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当時の社会を生き生きと映し出す多様な登場人物と物語設定の面白さ
「デカメロン」には、聖職者、商人、貴族、農民など、当時の社会のあらゆる階層の人物が登場します。彼らはそれぞれ異なる価値観や人生観を持ち、物語の中で複雑に関係し合います。
また、物語の舞台も、フィレンツェの街角から、異国情緒あふれる東洋、さらには天国や地獄までと幅広く設定されており、当時の社会の縮図を見るようです。
ボッカチオは、巧みな話術と描写力で、これらの登場人物や物語設定を生き生きと描き出しており、読者はまるで中世イタリアの世界に迷い込んだかのような感覚を味わえます。
さらに、物語には、当時の社会問題や風刺が巧みに織り交ぜられており、単なる娯楽作品を超えた社会的なメッセージも読み取ることができます。
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イタリア語散文の傑作と評価される文章の美しさ
「デカメロン」は、イタリア語散文の傑作と評価されており、その文章の美しさも大きな魅力の一つです。ボッカチオは、当時まだ洗練されていなかったイタリア語を用いて、流麗で洗練された文章を生み出しました。
物語の語り口は軽快でユーモアに富み、登場人物の心理描写も繊細です。喜劇的な場面では読者を笑わせ、悲劇的な場面では深い感動を与えるなど、その表現力は多岐にわたります。
「デカメロン」は、文学作品としてだけでなく、イタリア語の発展にも大きく貢献した作品と言えるでしょう。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。