ホールのアメリカ史の解釈の思考の枠組み
アメリカ史の解釈におけるターニングポイント
フレデリック・ジャクソン・ターナーは、1893年のアメリカ史学会で発表した論文「アメリカ史におけるフロンティアの影響」の中で、アメリカの民主主義はヨーロッパの伝統ではなく、西部のフロンティアにおける経験によって形作られたと主張しました。この論文は、アメリカ史学界に大きな衝撃を与え、その後のアメリカ史研究に多大な影響を与えました。ターナーは、フロンティアを「自由の地」「機会の地」「人間の再生の地」と表現し、アメリカ人の国民性を形成する上で重要な役割を果たしたと強調しました。
多様な解釈の登場
ターナーのフロンティア理論は、その後多くの歴史家によって批判され、修正が加えられていくことになります。その過程で、アメリカ史の解釈は多様化し、経済的な要因や社会的な要因、あるいは人種やジェンダーといった観点からも分析されるようになりました。例えば、チャールズ・ベアードは、アメリカ合衆国憲法を経済的な観点から解釈し、建国の父たちが自らの経済的利益のために憲法を制定したと主張しました。また、リチャード・ホフスタッターは、アメリカ政治における反知性主義の伝統を分析し、アメリカの政治文化の特異性を指摘しました。
新しい社会史の登場
1960年代以降、公民権運動やベトナム戦争の影響を受けて、アメリカ史学界では「新しい社会史」と呼ばれる動きが活発化しました。新しい社会史は、従来の政治史や外交史中心のアメリカ史研究を批判し、女性史や黒人史、労働史など、これまで歴史の表舞台から見過ごされてきた人々の経験や視点を重視しました。新しい社会史の登場は、アメリカ史研究の対象を大きく広げるとともに、歴史の解釈に多様性をもたらしました。