ホッブズのリヴァイアサンの原点
ホッブズの思想的背景
トーマス・ホッブズ(1588-1679)は、17世紀イギリスの政治哲学者であり、その代表作『リヴァイアサン』(1651年)は、西洋思想史における最も重要な政治哲学書の一つとされています。ホッブズの思想は、彼が生きていた時代背景と密接に関係しています。
イングランド内戦の影響
ホッブズが『リヴァイアサン』を執筆した当時、イングランドは清教徒革命(1642-1651)の真っ只中にありました。この内戦は、王党派と議会派の対立によって引き起こされ、社会は混乱と暴力に満ち溢れていました。ホッブズ自身も、この内戦によってフランスへ亡命することを余儀なくされています。
古代ギリシャ哲学の影響
ホッブズの思想は、古代ギリシャの哲学者、特にトゥキディデスやプラトンから大きな影響を受けています。トゥキディデスの『戦史』に見られるような、人間の本性に対する悲観的な見方は、ホッブズの思想の根底に流れています。また、プラトンの『国家』における、哲人王による統治という理想は、ホッブズの考える絶対君主制の概念に影響を与えていると考えられています。
自然状態と社会契約説
『リヴァイアサン』の中心的な概念である「自然状態」と「社会契約説」は、ホッブズ独自のものではなく、当時のヨーロッパで広く議論されていた思想でした。しかし、ホッブズはこれらの概念を、彼自身の経験と考察に基づいて、独自の理論として体系化しました。
自然科学の方法論
ホッブズは、当時の新しい学問であった自然科学、特にガリレオ・ガリレイの力学やウィリアム・ハーヴェーの血液循環説に強い影響を受けました。彼は、自然科学の方法論を政治哲学にも応用しようと試み、人間の行動を機械論的に分析し、社会を一つの巨大な機械(リヴァイアサン)として捉えました。
これらの要素が複雑に絡み合い、『リヴァイアサン』という傑作を生み出したのです。