ホッファーの大衆運動の原点
ホッファーの生い立ちと時代背景
エリック・ホッファーは1902年、ドイツに生まれました。幼少期に両親と死別し、7歳の時に視力を失います。その後、15歳で奇跡的に視力を取り戻しますが、この経験が後の人生に大きな影響を与えたと言われています。1920年代にはフランスやアメリカなどを放浪し、様々な職業を経験しながら市井の人々と生活を共にしました。
大衆運動との出会い
1930年代、ナチスドイツの台頭を目の当たりにしたホッファーは、大衆運動の持つ力に強い興味を抱くようになりました。特に、社会的に疎外された人々が、カリスマ的な指導者のもとで熱狂的に運動に身を投じていく様子に注目しました。彼は、港湾労働者として働きながら、労働運動や社会主義運動にも触れ、大衆運動に関する独自の考察を深めていきました。
独自の視点
ホッファーは、既存のイデオロギーや社会構造の分析ではなく、大衆運動に参加する人々の心理や行動に焦点を当てました。彼は、大衆運動を「不遇な境遇に置かれた人々が、現状からの脱却と新たな共同体の構築を求めて、自発的に集結する現象」と捉えました。
主著『狂信者』の執筆
1951年、ホッファーは自身の経験と考察に基づいた著作『狂信者:大衆運動の研究』を出版しました。この本の中でホッファーは、大衆運動の原動力となる要因として、「欲求不満」「疎外感」「現実逃避」などを挙げ、具体的な歴史的事例を交えながら分析しました。
その後の影響
『狂信者』は、出版当初は学術的な注目を集めることはありませんでしたが、1960年代に入ると、学生運動や公民権運動の高まりを受けて、広く読まれるようになりました。ホッファーの思想は、社会学や政治学だけでなく、心理学や歴史学など、様々な分野に影響を与え、今日でも大衆運動を理解するための重要な視点を提供しています。