ペインのコモン・センスの原点
アメリカ独立革命の機運の高まり
1776年1月10日に匿名で出版されたトーマス・ペインの「コモン・センス」は、アメリカ独立革命の機運を決定的に高めたパンフレットとして知られています。ペインが「コモン・センス」を執筆した背景には、当時のアメリカ植民地とイギリス本国との間の政治的、社会的な緊張の高まりがありました。
イギリスによる植民地政策への反発
1760年代に入ると、イギリスは七年戦争の戦費調達のために、それまで比較的緩やかだった植民地に対する統治を強め、砂糖法や印紙法などの様々な法律を制定して新たな税負担を課しました。植民地の人々は、自分たちの代表をイギリス議会に送ることなく一方的に課税されることに強く反発し、「代表なくして課税なし」のスローガンのもと、抵抗運動を展開しました。
啓蒙思想の影響
「コモン・センス」は、ジョン・ロックに代表される啓蒙思想の影響を強く受けています。ロックは、「統治二論」の中で、国民には生命、自由、財産といった自然権があり、政府は被治者の同意に基づいて統治を行うべきであると主張しました。ペインは、ロックの思想を踏まえ、イギリス国王による植民地支配は正当性を欠き、植民地の人々は独立する権利があると主張しました。
ペイン自身の経験
1774年にイギリスからアメリカに移住したペインは、税関職員や雑誌記者として働きながら、植民地の人々の不満や独立への機運の高まりを肌で感じ取っていました。彼は、独立運動を支持し、その思想を広めるために「コモン・センス」を執筆しました。
これらの要素が複雑に絡み合い、「コモン・センス」の誕生に繋がっていきました。ペインの鋭い筆致と分かりやすい論理は、独立か否かで揺れていた植民地の人々に独立の正当性を強く訴えかけ、アメリカ独立革命の大きな原動力となりました。