## ペインのコモン・センスから学ぶ時代性
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アメリカ独立前夜の空気感
トーマス・ペインの『コモン・センス』は、1776年1月10日に匿名で出版されると、瞬く間に植民地全体に広がり、ベストセラーとなりました。独立か否か、人々の心が揺れ動く中で、このパンフレットは独立へと舵を切る原動力となりました。
当時のアメリカ植民地は、イギリス本国との関係に課題を感じながらも、完全に独立という選択肢を明確に持てていませんでした。長年、本国との間には、経済的な不平等や政治的な発言力の制限といった問題がくすぶっていました。七年戦争後の重税政策は、植民地の不満をさらに増大させていました。
しかし、独立への道のりは平坦ではありませんでした。イギリス本国との歴史的な結びつき、軍事力、経済力への依存、そして独立後の不安など、人々の心に葛藤を生み出していました。多くの人々にとって、イギリス国王への忠誠心と、自由と自治を求める声の間で、複雑な思いを抱えていたのです。
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ペインの主張が人々の心に響いた理由
ペインは、このような時代背景の中、鋭い論理と平易な言葉で、独立の正当性を訴えました。彼は、植民地の人々が当然持つべき権利を明確に示し、イギリス国王による支配の不当性を批判しました。
『コモン・センス』が人々の心を掴んだのは、単に独立を唱えたからではありません。ペインは、それまでタブーとされてきた国王への批判を、一般の人々にも理解しやすい言葉で展開しました。彼は、政府の役割は人民の福祉にあり、人民は不当な支配に抵抗する権利を持つと主張しました。
また、ペインは、独立は単にイギリスからの解放を意味するのではなく、自由と平等に基づいた新しい国家を建設する機会であると訴えました。彼は、アメリカが世界の手本となるような、自由と正義を実現する国となる可能性を提示したのです。
彼の主張は、当時の社会状況と人々の心に潜む潜在的な独立への思いに合致し、多くの人々に共感を呼び起こしました。独立への不安を抱えていた人々にとっても、『コモン・センス』は、その不安を払拭し、新たな未来への希望を与えるものでした。