ベーベルの婦人論
女性の抑圧の根源
アウグスト・ベーベルの著書『婦人論』(1879年)は、女性の社会における立場を歴史的唯物論の観点から分析した作品です。ベーベルは、女性の抑圧の根源は生物学的な性差ではなく、経済的・社会的な要因、特に私的所有の発生と発展にあると主張しました。
原始共産制における男女平等
ベーベルは、エンゲルスと同様に、人類の歴史においては、私的所有制度が存在しない原始共産制の時代が存在したと考えました。この時代には、生産手段は共同所有であり、労働は性別に基づいて分業されていませんでした。そのため、女性は男性と同等の社会的地位を占め、経済的にも自立していたとベーベルは主張します。
私的所有制による女性の従属
しかし、私的所有制の出現とともに、状況は一変します。生産手段を所有するようになった男性は、経済的な優位性を背景に、女性を従属的な立場に置くようになったのです。女性は、男性の所有物とみなされ、家事労働や子育てに限定されるようになりました。
一夫一妻制と女性の抑圧
ベーベルは、一夫一妻制もまた、女性の抑圧を強化するシステムとして機能したと指摘します。一夫一妻制は、男性が女性の性的・生殖能力を独占することを可能にし、女性を家庭に閉じ込める役割を果たしました。
資本主義と女性の労働
資本主義の台頭は、女性の労働を工場へと駆り立てました。しかし、資本主義社会においても、女性は男性よりも低い賃金で働かされ、劣悪な労働環境に置かれていました。ベーベルは、女性の労働力の搾取は、資本主義の利潤追求メカニズムと深く結びついていると批判しました。
女性の解放と社会主義
ベーベルは、女性の真の解放は、資本主義社会の枠組みの中では実現不可能だと考えました。彼は、私的所有制が廃止され、生産手段が社会化された社会主義社会の実現こそが、女性の抑圧を根絶する道だと主張しました。社会主義社会においては、女性は男性と平等な権利と機会を享受し、経済的・社会的に自立することが可能になるとベーベルは展望しました。