## ベーコンの新機関を読む
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概要
フランシス・ベーコンによって1620年に発表された『ノヴム・オルガヌム』(Novum Organum)は、日本語では『新機関』と訳され、近代科学の方法論の基礎を築いた書として知られています。当時の学問を支配していたアリストテレス主義の演繹法を批判し、観察と実験に基づく帰納法を提唱しました。
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構成と内容
『新機関』はラテン語で書かれ、全2部、計192の格言から成り立っています。
* **第1部:** 既存の学問、特にアリストテレス哲学に対する批判が展開されます。「イドラ」と呼ばれる人間の偏見や先入観を4つ挙げ、それが真の知識獲得を阻害していると指摘します。
* **第2部:** ベーコンが提唱する新たな科学的方法、すなわち帰納法について詳細に説明します。自然現象を観察し、そこから法則を導き出すための具体的な手順を示し、その過程で「事実を集める表」を作成することの重要性を説いています。
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歴史的背景
『新機関』が書かれた17世紀初頭は、ヨーロッパではルネサンスや宗教改革を経て、中世的な権威主義から脱却し、人間自身の理性に基づいた新たな世界観が求められていました。ベーコンは、従来の学問が言葉の解釈や思弁に偏っていることを批判し、自然現象を直接観察し、そこから実用的な知識を引き出すことを目指しました。
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影響
『新機関』は、その後のヨーロッパにおける科学革命に大きな影響を与えました。特に、イギリス王立協会など、観察と実験を重視する科学学会の設立を促しました。ベーコンの思想は、近代科学の方法論の基礎となり、今日の科学技術の発展に貢献しています。