ベーコンの新機関の選択
ベーコンの思想における「新機関」の意義
フランシス・ベーコンは、16世紀後半から17世紀前半にかけて活躍したイギリスの哲学者、政治家です。彼は、当時の学問がスコラ哲学の権威主義に陥り、現実世界における有用性をもたらさないものになっていることを批判しました。ベーコンは、自然の探求を通じて人類の幸福を実現するという目標を掲げ、そのために新しい学問の方法論と制度が必要であると考えました。この新しい方法論と制度こそが、「新機関」と呼ばれています。
「新機関」の内容
ベーコンは、主著である『ノヴム・オルガヌム』(1620年)において、従来の演繹法ではなく、帰納法に基づく新しい科学的方法を提唱しました。この方法は、観察と実験を通じて得られた多数の個別的な事実から、一般的な法則を導き出すというものです。
また、ベーコンは、『ニュー・アトランティス』(1627年)において、科学研究を組織的に推進するための理想的な研究機関として、「ソロモンの家」を描写しました。ソロモンの家では、専門的な知識や技術を持った多数の人々が共同で研究を行い、その成果は人類の福祉のために利用されることになります。
「新機関」の選択
ベーコンが「新機関」において重要視したのは、以下の2点です。
1. **効果的な科学的方法の選択:** ベーコンは、帰納法に基づく新しい科学的方法こそが、自然の秘密を解き明かすための最も効果的な方法であると確信していました。
2. **組織的な研究体制の構築:** ベーコンは、個人による断片的な研究ではなく、国家的な規模で組織化された研究体制が必要であると考えていました。
ベーコンは、これらの要素を含む「新機関」を通じて、人類は自然を征服し、より豊かで幸福な社会を実現できると信じていました。