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ベーコンのノヴム・オルガヌムを読んだ後に読むべき本

ベーコンのノヴム・オルガヌムを読んだ後に読むべき本

トーマス・クーン著「科学革命の構造」

フランシス・ベーコンの「ノヴム・オルガヌム」は、科学における画期的な作品であり、観察と実験に基づいた、帰納的推論を用いた新しい科学的手法を提唱しました。この書は、アリストテレス主義と中世のスコラ哲学に挑戦し、その影響力は計り知れませんでした。しかし、科学的知識の進歩という複雑な問題を完全に捉えきれたわけではありません。この問題をより深く探求するには、トーマス・クーンの「科学革命の構造」を読むことが不可欠です。

1962年に初版が発行されたクーンの著書は、科学史と科学哲学の両方に大きな影響を与えました。この本でクーンは、「パラダイム」という概念を提示しました。これは、特定の時期における科学者共同体が共有する、問題や思考方法、理論的枠組み、方法論などを包括的に表すものです。

クーンによれば、科学はベーコンが提唱したような、直線的で累積的な知識の進歩ではなく、「通常科学」「危機」「革命」というサイクルを繰り返すことで発展していきます。通常科学とは、あるパラダイムが支配的な時期に行われる、そのパラダイムに基づいた研究活動です。科学者たちは、そのパラダイムが提供する枠組みの中で、パズルを解くように研究を進めます。しかし、パラダイムでは説明できない「反証」が蓄積されていくと、科学者共同体はそのパラダイムに疑問を抱き始めます。これが「危機」です。

危機は、新しいパラダイムが登場し、古いパラダイムと競合することで、やがて「革命」へと移行します。革命期には、新しいパラダイムが古いパラダイムを完全に置き換えるわけではなく、しばしば並存します。そして、最終的には、より多くの科学者たちの支持を集めたパラダイムが勝利し、新しい通常科学が始まります。

クーンの主張は、ベーコンの考え方をさらに発展させたものと言えるでしょう。ベーコンは、観察と実験を通じて客観的な知識を獲得することを重視しましたが、クーンは、科学者共同体やパラダイムといった社会的、歴史的文脈が、科学的知識の形成に大きな影響を与えることを明らかにしました。

「科学革命の構造」を読むことは、「ノヴム・オルガヌム」で提示された科学的方法の限界を理解し、科学という営みが持つ複雑さを認識する上で非常に重要です。クーンの洞察は、科学史、科学哲学、そして科学そのものに対する私たちの理解を深めるために、今日でも重要な意味を持っています。

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