ベーコンのノヴム・オルガヌムの位置づけ
ノヴム・オルガヌムの出版と目的
フランシス・ベーコンの主著『ノヴム・オルガヌム』(Novum Organum)は、1620年にラテン語で出版されました。 原題は『Instauratio Magna』(大復興)の第二部として構想された『Novum Organum Scientiarum』(学問の新機関)です。
この書においてベーコンは、古代ギリシアのアリストテレスの論理学に基づく従来の学問の方法を批判し、新しい科学的方法を提唱しました。 ベーコンは、従来の学問が推論に偏重し、経験を軽視してきたために、真の知識の獲得に失敗してきたと考えたのです。
帰納法とイドラ理論
ベーコンは、観察と実験に基づいた帰納法こそが、真の知識に到達するための唯一の道であると主張しました。 彼は、自然現象を注意深く観察し、そこから一般的な法則を導き出す帰納的な推論こそが、科学の進歩に不可欠だと考えました。
またベーコンは、人間が陥りやすい認識の誤りを「イドラ(idola)」と呼び、その克服を訴えました。 イドラには、「種族のイドラ」「洞窟のイドラ」「市場のイドラ」「劇場のイドラ」の四種類があり、それぞれ人間の感覚、先入観、言語、権威などが真の認識を阻害するとされます。 ベーコンは、これらのイドラを排除し、偏見のない観察と実験を通してのみ、真の知識を獲得できるとしました。
科学革命における位置づけ
『ノヴム・オルガヌム』は、17世紀の科学革命において重要な役割を果たしました。ベーコンの思想は、同時代のヨハネス・ケプラーやガリレオ・ガリレイ、後のアイザック・ニュートンといった科学者たちに大きな影響を与え、近代科学の方法論の基礎を築くことに貢献しました。
ただし、ベーコン自身の科学的業績は限定的であり、彼の方法論もまた、現代の科学哲学の観点からは批判の対象となることもあります。 それでもなお、『ノヴム・オルガヌム』は、近代科学の黎明期における重要な思想的遺産として、現代においてもなおその意義を失っていません。
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