## ベンサムの道徳と立法の諸原理序説の原点
ベンサムの思想的背景
ジェレミー・ベンサム(1748-1832)は、イギリスの哲学者、法学者、社会改革者であり、功利主義の創始者として知られています。彼の思想は、啓蒙主義、特にイギリス経験論の影響を強く受けています。
イギリス経験論の影響
ベンサムは、ジョン・ロックやデイヴィッド・ヒュームといったイギリス経験論の哲学者たちの影響を受けました。これらの思想家は、人間の知識は経験に由来すると主張し、理性よりも感覚的経験を重視しました。ベンサムは、この経験論的な立場から、道徳や法律の基礎もまた、人間の経験、特に快楽と苦痛の経験に基づくと考えました。
功利主義の着想
ベンサムは、人間の行動の動機は快楽の追求と苦痛の回避であると考えました。そして、この心理学的洞察に基づき、「最大多数の最大幸福」という原則を提唱しました。これは、道徳的に正しい行為とは、最大多数の人々に最大限の幸福をもたらす行為であるとする考え方です。ベンサムは、この功利主義の原則を道徳だけでなく、立法や社会政策にも適用しようとしました。
社会改革への情熱
ベンサムは、当時のイギリス社会に存在した不平等や不合理を批判し、社会改革の必要性を訴えました。彼は、功利主義の原則に基づき、法制度、刑罰制度、政治制度などを改革することで、より公正で幸福な社会を実現できると信じていました。
『道徳と立法の諸原理序説』の出版
1789年、ベンサムは自身の道徳哲学と法哲学の集大成として、『道徳と立法の諸原理序説』を出版しました。この著作の中で、ベンサムは功利主義の原則を体系的に展開し、それを立法や社会政策に応用する方法を示しました。