ベルクソンの時間と自由の関連著作
アンリ・ベルクソンの時間と自由
アンリ・ベルクソンの著作『時間と自由』 (Essai sur les données immédiates de la conscience) は、1889年に発表された彼の最初の主要な哲学的著作です。 この作品は、人間の意識における時間の経験を探求し、自由意志の問題、決定論と自由の関係について考察しています。
時間と自由の主要なテーマ
**時間の経験**: ベルクソンは、科学的時間と我々が経験する時間の間に根本的な違いがあると主張します。科学的時間は客観的で均質であり、時計によって測定される量的なものです。一方、我々が経験する時間は主観的で、不均質であり、質的なものです。
ベルクソンは、この主観的な時間を「 durée 」と呼びます。「 durée 」は、過去の経験が現在と結びつき、未来へと開かれているような、連続的で不可分な流れとして経験される時間です。
**自由意志**: ベルグソンにとって、自由意志の問題は、時間に対する理解と密接に関係しています。彼は、決定論が科学的な時間概念に基づいていると批判します。決定論は、すべての出来事が過去の出来事によって決定されると主張しますが、ベルクソンは、「 durée 」の概念に基づいて、未来は開かれており、決定されていないと主張します。
彼は、自由な行為とは、過去の習慣や社会的な制約にとらわれず、「 durée 」の全体性から湧き上がるような行為であると説明します。
関連する歴史的名著
* **イマヌエル・カント『純粋理性批判』**: カントは、時間は人間の感性に属する先験的な形式であり、我々が経験を秩序付けるための枠組みを提供すると主張しました。ベルクソンはカントの時間論に影響を受けながらも、カントが時間を均質なものとして捉えている点を批判し、時間の質的な側面を強調しました。
* **ウィリアム・ジェームズ『心理学の原理』**: ジェームズは、意識の流れという概念を提唱し、意識は断片的な要素ではなく、連続的な流れとして経験されると主張しました。ベルクソンの「 durée 」の概念は、ジェームズの意識の流れの概念と多くの共通点を持っています。
* **エドマンド・フッサール『現象学の理念』**: フッサールは、現象学という哲学的方法を提唱し、事物の本質を理解するためには、先入観を取り払い、事物が意識に現れるそのままの姿を記述することが重要であると主張しました。ベルクソンの哲学は、フッサールの現象学と多くの点で共鳴しており、意識の直接的な経験を重視する点で共通しています。