## ベルクソンの時間と自由の主題
問題提起: 科学的時間と人間の自由
アンリ・ベルクソンは、その代表作『時間と自由』において、当時の支配的な科学的思考が人間の自由という問題を矮小化していると批判しました。彼によれば、科学は時間を空間化し、均質で可逆的なものとして捉えています。これは、時計の針が刻むように、過去から未来へと一定の速度で流れる直線的な時間をイメージさせます。しかし、ベルクソンはこのような時間理解では、人間の意識が経験する時間の本質を捉えきれないと主張しました。
ベルクソンの提唱: 純粋持続としての時間
ベルクソンは、真の時間は「純粋持続」として捉えられるべきだと主張しました。純粋持続とは、過去から未来へと不可逆的に流れ行く、質的に異質な瞬間の連続であり、そこには常に新しいものが創造されています。これは、私たちの意識が経験する時間、つまり、退屈な会議が永遠に続くように感じたり、楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまうように感じる、あの主観的な時間を指しています。
自由の根拠: 持続と創造
ベルクソンにとって、自由とはこの純粋持続と密接に関係しています。彼は、人間の意識は過去の経験の蓄積であると同時に、常に未来へと開かれた存在であると捉えました。そして、自由とは、この純粋持続の中で、過去の経験に基づきながらも、全く新しい行動や思考を創造する力であると定義しました。
持続と自由の認識: 直観の重要性
ベルクソンは、この純粋持続としての時間と、そこから生まれる自由は、知性ではなく「直観」によってのみ把握できると主張しました。直観とは、対象を分析的に理解するのではなく、全体として捉えようとする心の働きを指します。彼によれば、私たちは自分自身の内面的な意識体験に直接的に向き合うことで、初めてこの純粋持続と自由を真に理解することができるのです。