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ベルクソンの創造的進化と時間

## ベルクソンの創造的進化と時間

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時間論

アンリ・ベルクソンは、著書『物質と記憶』(1896年)や『創造的進化』(1907年)において、独自の時間論を展開しました。彼によれば、時間は大きく分けて二つの側面を持つと考えられます。

一つは、「空間化された時間」と呼ばれるものです。これは、我々が日常生活で用いる、時計によって計られる均質で可逆的な時間です。ベルクソンはこの時間を「量的時間」とも呼び、科学的な分析には有効だが、生命や意識の真実に迫ることはできないと批判しました。

もう一つは、「純粋持続」と呼ばれるものです。これは、我々の内面的な意識体験として現れる、非連続的で不可逆的な時間の流れです。ベルクソンは、この純粋持続こそが真の時間であると考えました。純粋持続は、過去から現在を経て未来へと絶えず流れ行く創造的なものであり、そこでは過去は現在の中に生き続け、未来は未決定のまま開かれています。

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創造的進化論

ベルクソンは、この純粋持続の概念を基に、独自の進化論を展開しました。彼は、生命進化を「生命の躍動」と呼び、生命は機械論的な法則に還元できない創造的な力である「生の勢い(elan vital)」によって駆動されると考えました。

生の勢いは、絶えず新たな形態を生み出しながら進化を推し進めます。この進化の過程は、予め決定されたものではなく、予測不可能なものです。ベルクソンは、生の勢いが進化の過程で、植物、動物、人間という三つの大きな方向に分岐したと考えました。

植物は、主に空間的な広がりを持つ方向に進化し、動物は運動能力を発達させることで時間的な流れにより深く関わる方向に進化しました。そして、人間は意識と知性を獲得することで、純粋持続を最もよく体現する存在となりました。

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直観と知性

ベルクソンは、生の勢いや純粋持続を理解するためには、「直観」が必要であると主張しました。直観とは、分析的な知性とは異なる、生命の全体性を捉えるための認識能力です。知性は、対象を空間化し、静止した断片へと分解することで認識しようとしますが、直観は、対象に共感し、その内側から動きを捉えようとします。

彼は、哲学や芸術は、この直観によって生の勢いや純粋持続を表現しようとする試みであると考えました。ベルクソンは、自身の哲学もまた、直観によって生の真実を明らかにしようとする試みであると位置づけています。

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