## ベネディクトの「文化の型」とアートとの関係
文化の型におけるアートの扱い
ルース・ベネディクトの主著『文化の型』（1934年）は、文化相対主義を主張した画期的な人類学研究として知られていますが、アートそのものに対する言及は限定的です。ベネディクトは、文化を「個人に一定の行動様式を型づけるもの」と捉え、それぞれの文化が独自の価値観や行動規範を持つことを強調しました。彼女は、文化を統合された全体として理解することの重要性を説き、その中で宗教、儀式、習慣、芸術などが相互に関連し合って機能していると論じました。
文化の型と芸術表現の関係
ベネディクトは、芸術表現もまた、その文化に根ざした価値観や世界観を反映していると暗に示しています。彼女は具体的な芸術作品を分析対象とすることはしませんでしたが、文化の全体像を理解するための一要素として、芸術表現の存在を認めていました。
例えば、ベネディクトは、プエブロ族、ドーブー族、クワキウトル族といった異なる文化における宗教観や行動様式を比較分析しました。その中で、それぞれの文化における儀式や儀礼、そしてそれらに付随する歌、踊り、仮面などの造形物が、その文化特有の価値観や世界観を表現していることを指摘しています。
ベネディクトの視点から考察できる点
ベネディクトの文化の型は、芸術作品を解釈する上でも重要な視点を提供します。
* 芸術作品は、単なる個人の創造物の枠を超え、それを生み出した文化の価値観や世界観を色濃く反映していると考えられます。
* 同じ文化圏で制作された芸術作品は、共通の文化的背景を共有しているため、類似したテーマや様式が見られる可能性があります。
* 異なる文化圏で制作された芸術作品は、その文化的背景の違いが、表現方法やテーマの選択に影響を与えている可能性があります。
ベネディクトの研究は、芸術作品を文化的な文脈の中で理解することの重要性を示唆しており、その視点は、今日の多様な芸術表現を解釈する上でも重要な示唆を与えてくれます。