## ヘーリングの法律学における目的の分析
### ヘーリングの背景と著作物について
ルドルフ・フォン・イェーリング（Rudolf von Jhering, 1818-1892）は、19世紀ドイツを代表する法学者の一人です。彼は、ローマ法の研究から出発し、その後、「目的のための法」という独自の法思想を展開しました。彼の主要な著作には、『ローマ法の精神』（Der Geist des römischen Rechts auf den verschiedenen Stufen seiner Entwicklung, 1852-1865）、『権利のための闘争』（Der Kampf ums Recht, 1872）、『法律の目的における法と利益』（Der Zweck im Recht, 1877-1883）などがあります。
### 法律の目的論と概念法学への批判
ヘーリングは、当時のドイツ法学界で主流であった「概念法学」を批判しました。概念法学は、法体系を論理的に整合のとれた概念の体系として捉え、法解釈においても、法概念の論理的な分析を重視しました。
ヘーリングは、このような概念法学のアプローチは、現実の社会生活における法の役割を軽視していると批判しました。彼は、「法は生活のための技術である」という有名な言葉を残しています。これは、法が社会生活における具体的な問題を解決するための手段であることを強調したものです。
### ヘーリングの目的論：法における目的の役割
ヘーリングは、法の目的を「社会生活における利益の保護」と捉えました。彼は、あらゆる法規範は、特定の社会生活上の目的を達成するために設定されたものであると主張しました。
ヘーリングは、法の目的を、(1)直接の目的と(2)究極の目的の二つに区別しました。直接の目的とは、個々の法規範が直接的に達成しようとする目的を指します。一方、究極の目的とは、法全体が最終的に実現しようとする目的を指し、ヘーリングはこれを「社会生活における利益の調和」と定義しました。
### 利益法学と法解釈における目的論の適用
ヘーリングの法思想は、「利益法学」と呼ばれます。これは、法を、社会生活における様々な利益を調整し、調和するための手段として捉える立場です。
ヘーリングは、法解釈においても、法規範の背後にある目的を考慮することが重要であると主張しました。彼は、法の適用においては、形式的な論理だけに頼るのではなく、その法規範がどのような社会生活上の問題を解決するために制定されたのか、その適用によってどのような利益が保護されるのかを考慮する必要があると考えました。