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ヘーゲルの法哲学要綱の表象

ヘーゲルの法哲学要綱の表象

表象とは

表象 (Vorstellung) とは、ヘーゲル哲学においては、感性と悟性の中間にある認識の段階を指します。感性的な意識が対象を感覚的に捉え、それを個別具体的なイメージとして心に描き出すのに対し、悟性は対象を抽象的な概念によって把握しようとします。表象は、この両者の中間に位置し、感覚的イメージを伴いつつも、ある程度は一般化・抽象化された形で対象を捉えます。

法哲学要綱における表象の役割

ヘーゲルの『法哲学要綱』において、表象は、主に第二部「抽象的法」において重要な役割を果たします。抽象的法とは、まだ倫理的・社会的現実性を帯びていない、抽象的な権利関係を扱う領域です。この領域においては、個人は自己の意志と自由を抽象的に規定し、他者もまた同様の抽象的な権利主体として認識されます。

所有における表象

例えば、所有の概念は、表象の段階で成立します。所有とは、特定の物を「自分のもの」として排他的に支配することを意味しますが、この「自分のもの」という感覚は、感性的な所有意識に基づくものです。私たちは、特定の物を繰り返し使用したり、自分の近くに置いたりすることで、それを「自分のもの」と感じます。

契約における表象

同様に、契約の概念も、表象の段階で成立します。契約とは、二人の自由な意志の合致によって成立する法的関係ですが、この「合致」は、具体的な合意の内容というよりは、「約束を守る」という抽象的な義務感に基づいています。この義務感は、具体的な状況とは独立に、約束が交わされたという事実のみに基づいて生じます。

表象の限界

しかし、表象の段階にとどまっている限り、真の法的秩序は実現されません。なぜなら、表象はあくまでも主観的な意識の産物であり、客観的な妥当性を持たないからです。例えば、所有の概念は、所有する対象や所有の範囲によって変化しますし、契約の概念も、具体的な状況や当事者の関係性によってその解釈が異なります。

表象から概念へ

真の法的秩序を実現するためには、表象の段階を超えて、概念の段階へと進む必要があります。概念の段階においては、法は、もはや個々の主観的な意識の産物ではなく、理性的な原理に基づいて客観的に規定されます。

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