ヘルダーの言語起源論が関係する学問
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言語学
ヘルダーの主著『人間性形成のための歴史の哲学』の一セクションとして発表された「言語起源論」は、比較言語学の成立に大きな影響を与えました。ヘルダーは言語の起源を、人間が自然の音を模倣することによって生まれたとする「ボーボーボー理論」を否定し、言語は人間精神の産物であると主張しました。これは、後のヴィルヘルム・フォン・フンボルトやヴィルヘルム・グリムなど、19世紀の比較言語学の基礎を築いた学者たちに多大な影響を与えました。
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哲学
ヘルダーの言語論は、当時の哲学、特にドイツ観念論にも深く関わわっています。言語を人間精神の反映と捉えるヘルダーの思想は、カントの認識論と深く結びついています。カントは、人間は外界を直接認識するのではなく、自身の感覚器官と悟性によって構成された主観的な世界を認識すると主張しました。ヘルダーは、言語もまた人間精神によって構成されたものであり、それぞれの民族の言語は彼らの思考様式や文化を反映していると論じました。
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歴史学
ヘルダーは言語を歴史的な産物と捉え、それぞれの言語は民族の歴史や文化と共に発展してきたと考えました。彼は、言語の比較研究を通じて、人類の歴史や文化の多様性を明らかにできると信じていました。ヘルダーの歴史観は、当時の啓蒙主義的な歴史観とは一線を画しており、後のロマン主義やナショナリズムにも影響を与えました。
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人類学
ヘルダーは、言語の多様性を通じて、人間の文化や思考様式の多様性もまた認められるべきだと主張しました。これは、後の文化相対主義の萌芽とも言えるでしょう。彼は、それぞれの文化や言語はそれ自体に固有の価値を持っており、優劣をつけることはできないと考えました。この考え方は、後の文化人類学の発展に寄与しました。