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ヘミングウェイの老人と海の対称性

## ヘミングウェイの老人と海の対称性

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人物描写における対称性

老人サンチャゴと少年マノリンの関係は、物語全体を通して一種の鏡像関係、あるいは対称性を示しています。老いたサンチャゴは、かつては少年だった頃の自分自身の姿と重ね合わせられる一方で、マノリンはサンチャゴの老後、あるいは彼が失った若々しい活力の象徴として描かれています。

例えば、物語の冒頭では、かつて優秀な漁師であったサンチャゴの衰えた姿が描かれます。彼は84日間も魚を釣ることができず、「salao(負け犬)」とまで呼ばれています。一方のマノリンは、サンチャゴを尊敬し、彼から漁の技術を学びたいと願う、若く、活力に満ちた少年として登場します。

しかし、物語が進むにつれて、二人の立場は逆転していきます。サンチャゴは巨大カジキとの壮絶な格闘を通して、老いてもなお、不屈の精神と誇りを持っていることを証明します。逆にマノリンは、サンチャゴの帰りを心配しながら待つ、弱く未熟な存在として描かれる場面も出てきます。

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自然との対称性

サンチャゴと自然界との関係にもまた、対称性が見て取れます。彼は海を深く愛し、魚を尊敬の念を持って扱います。しかし同時に、海は彼にとって試練と苦難の場でもあります。

サンチャゴは巨大カジキとの闘いの中で、自然の力強さ、そして人間の弱さを痛感させられます。彼はカジキを「兄弟」と呼び、その美しさ、力強さに敬意を払いますが、最終的には彼を殺さざるを得ません。この行為は、人間と自然との間にある、共存と対立という複雑な関係を象徴していると言えるでしょう。

また、サンチャゴは海鳥やサメといった他の生物たちとも関わりを持ちますが、そこにも自然との対称性が表れています。海鳥は彼に希望を与える存在として描かれる一方で、サメは彼の努力を無に帰す残酷な存在として登場します。

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