## ヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」とアートとの関係
ハリーと過去の創作活動
主人公のハリーは、かつては情熱的な作家でしたが、アフリカで受けた傷がもとで死を待つ身となっています。彼は過去の栄光と、実現できなかった創作活動について思いを巡らせます。物語の中で、ハリーは過去の恋愛や経験を振り返りながら、それらを題材にした作品を書こうとしていたことを示唆する描写が何度か登場します。
例えば、パリでの貧しい生活、戦争の経験、そして様々な女性との関係などが断片的に語られます。これらはハリーが作家として経験を作品に昇華させることができずに、時間だけが過ぎてしまったことを示しています。
アートと人生の対比
「キリマンジャロの雪」では、ハリーの死の過程と並行して、彼が見てきたアフリカの雄大な自然が描かれています。キリマンジャロの雪は、純粋で永遠の美を象徴する一方で、ハリーの腐敗していく肉体は、人間の儚さ、そして彼が成し遂げられなかった芸術の不滅性を浮き彫りにします。
ハリーは、美しい風景や過去の経験を前にしながらも、それを作品として形にすることができずにいます。このことから、人生の経験と芸術作品とを対比させ、真の芸術を生み出すことの難しさを読み取ることができます。
写真と文章
ハリーの妻ヘレンは、写真撮影を趣味としています。写真という芸術は、瞬間を切り取り、記録するものであり、ハリーが目指していたであろう、より深みのある創作活動とは対照的なものとして描かれています。
ハリーはヘレンの写真を「説明的なだけで、何も表現していない」と酷評します。これは、彼が芸術に求めていたものが、表面的な記録ではなく、人間の感情や経験の本質を捉えたものであったことを示唆しています。