## ヘッセのシッダールタに関連する歴史上の事件
###
仏教の誕生
『シッダールタ』の舞台となる古代インドは、まさに仏教が生まれた時代と重なります。紀元前6世紀から5世紀頃、歴史上の実在の人物であるゴータマ・シッダールタ（釈迦）が、苦悩に満ちた人生の真実と、そこから解放されるための道を説いたのが仏教の始まりです。小説の主人公シッダールタも、釈迦と同じ名前を持ち、彼と同じく精神的な探求の旅に出ます。
小説では、シッダールタが当時のインド社会で重要な役割を果たしていたバラモン階級の出身であること、出家して沙門となること、そして悟りを求めて苦行を重ねる姿などが描かれています。これらは、当時の仏教の隆盛や、人々が精神世界に強い関心を寄せていた時代背景を色濃く反映しています。
###
ジャイナ教の影響
仏教とほぼ同時期にインドで生まれたジャイナ教も、『シッダールタ』に影響を与えたと考えられます。ジャイナ教は、徹底した不殺生と苦行を重視する宗教です。小説の中で、シッダールタは一時的にジャイナ教の修行者と共に生活し、彼らの厳しい修行を体験します。
シッダールタは、ジャイナ教の教えに共感しながらも、最終的には自分の道を見つけるために彼らと別れることになります。これは、ヘッセ自身が東洋思想を探求する中で、特定の宗教や思想に固執することなく、自分自身の内面を見つめることの重要性を説いていたことを反映しているのかもしれません。