プーシキンのエウゲニー・オネーギンの世界
登場人物
* **エウゲニー・オネーギン**: ペテルブルグの社交界に飽き飽きした、皮肉屋で退屈な青年貴族。遺産相続を機に田舎に移住し、そこでタチヤーナと出会い、彼女の愛を拒絶してしまう。数年後、社交界に復帰した彼は、美しく成長したタチヤーナに恋をするが、今度は彼女に拒絶されるという皮肉な運命を辿る。
* **タチヤーナ・ラリーナ**: ロマンチストで純粋な、田舎に住む若い娘。オネーギンに恋心を抱き、率直な気持ちを綴った手紙を送るが、冷たく拒絶されてしまう。その後、社交界の花として華々しく登場し、オネーギンの心を捕らえる。
* **ウラジーミル・レンスキー**: オネーギンの友人となる、若く情熱的な詩人。タチヤーナの姉オリガと婚約している。オネーギンとの決闘で命を落とす。
* **オリガ・ラリーナ**: タチヤーナの姉で、レンスキーの婚約者。明るく社交的な性格だが、やや軽薄な面も持ち合わせる。
舞台
小説の舞台は19世紀初頭のロシア。華やかで退廃的なペテルブルグの社交界と、伝統的で牧歌的な雰囲気の田舎が対比的に描かれている。
* **ペテルブルグ**: 当時のロシアの首都であり、貴族社会の中心地。オネーギンが育った場所であり、彼が退屈と倦怠感を感じる場でもある。社交界の虚栄心や上辺だけの付き合いが横行している。
* **田舎**: ラリーナ家が暮らす、自然豊かなのどかな場所。伝統的な生活様式や価値観が色濃く残る。オネーギンは都会の生活に疲弊し、この田舎に新しい生活を求める。
テーマ
* **愛と喪失**: オネーギンとタチヤーナの悲恋を中心に、様々な形の愛が描かれる。オネーギンの冷めた態度とタチヤーナの純粋な愛情の対比、レンスキーの情熱的な愛とオリガへの想いの結末など、愛の複雑さと残酷さが浮き彫りになる。
* **社会と個人**: 貴族社会の慣習や価値観に翻弄される登場人物たちの姿を通して、個人の自由や幸福、自己実現といったテーマが描かれる。オネーギンの倦怠感や、タチヤーナの葛藤は、当時の社会における個人の生きづらさを反映している。
* **運命と選択**: 登場人物たちは、運命的な出会い、予期せぬ別れ、避けられない悲劇など、様々な形で運命に翻弄される。一方、オネーギンがタチヤーナの愛を拒絶する場面など、重要な局面での選択がその後の運命を大きく左右していく様子が描かれている。