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プルーストの失われた時を求めてに影響を与えた本

プルーストの失われた時を求めてに影響を与えた本

ジョン・ラスキンの『ヴェネツィアの石』

マルセル・プルーストは、イギリスの美術評論家、ジョン・ラスキンの著作、特に『ヴェネツィアの石』の大ファンとして知られていました。ラスキンの作品は、プルーストの代表作、「失われた時を求めて」に深い影響を与え、その影響は作品のテーマ、文体、美的感覚など、様々なレベルで見られます。

まず、『ヴェネツィアの石』は、ヴェネツィアの建築を通して、その歴史、文化、そして衰退していく姿を描き出すという、独特な手法を用いた作品です。ラスキンは、石という物質的な存在を通して、そこに刻まれた時間、人の営み、そして芸術の力を鮮やかに浮かび上がらせます。プルーストもまた、「失われた時を求めて」の中で、マドレーヌや紅茶の香りといった具体的な感覚を通して、過去を鮮やかに蘇らせるという手法を用いています。これは、ラスキンの作品から大きな影響を受けた結果と言えるでしょう。

さらに、ラスキンは、作品の中で、芸術と道徳、美と真実といったテーマを深く掘り下げています。彼は、真の芸術とは、単なる装飾や技術の誇示ではなく、道徳的な高潔さと真実への追求によって生まれるものであると主張しました。プルーストもまた、「失われた時を求めて」を通して、芸術の持つ力、そしてそれが人間存在に与える影響について深く考察しています。主人公のマルセルは、芸術を通して自己と向き合い、人生の意味を探求していく姿が描かれています。

文体においても、ラスキンの影響は顕著に見られます。ラスキンは、非常に描写豊かで、詩的な文章で知られており、彼の文章は、読者を作品世界へと引き込む力を持っていました。プルーストもまた、長文を駆使した複雑な文章構造と、感覚的な描写を得意としており、その文体を通して、登場人物の心理や時間の流れを巧みに表現しています。

「失われた時を求めて」には、ラスキンの作品からの直接的な引用は多くありません。しかし、プルーストは、ラスキンの作品をフランス語に翻訳し、深く読み込み、そのエッセンスを自身の作品に昇華させることに成功しました。ラスキンの影響は、プルーストの美的感覚の基礎を築き、「失われた時を求めて」を、単なる小説の枠を超えた、時間と記憶、そして芸術の傑作たらしめる上で、大きな役割を果たしたと言えるでしょう。

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