プルタークの英雄伝と言語
プルタークの英雄伝について
プルタークの『英雄伝』(Παράλληλοι Βίοι、Parallel Lives)は、古代ギリシャとローマの著名な人物の伝記を対にした作品群です。原題が示すように、各章ではギリシャとローマの英雄を一人ずつ取り上げ、その生涯と業績を比較検討する形式をとっています。現存するものはギリシャ人23人とローマ人23人の伝記で構成され、計46人の人物が描かれています。
プルタークの言語の特徴
プルタークは、アッティカ方言を模倣した古典ギリシャ語で著作を行っていました。これは、彼が活動した1世紀後半から2世紀前半にかけて、アッティカ方言が古典期の文語として高く評価されていたためです。しかし、プルタークのギリシャ語には、古典期のアッティカ方言には見られない、後世の口語の影響を受けた表現や文法も散見されます。
具体的には、
* **語彙**: ホメロスやヘロドトスなどの古典期の作家からはあまり用いられない、後世の作家に多く見られる語彙が使用されています。
* **文法**: 古典期のアッティカ方言では厳密に区別されていた語尾や活用形が、プルタークの文章では混用されていることがあります。
* **文体**: 古典期のアッティカ方言の特徴である簡潔で格調高い文体とは異なり、プルタークの文体は比較的冗長で、修辞的な表現が多く見られます。
プルタークの言語が後世に与えた影響
プルタークのギリシャ語は、古典期のアッティカ方言を忠実に模倣したものではありませんでしたが、その明快で流麗な文体は、後世の作家たちに高く評価されました。ルネサンス期以降、ヨーロッパでは古典古代の文化が復興し、プルタークの作品も広く読まれるようになりました。彼の文体は、多くの作家たちに影響を与え、ヨーロッパ文学の発展に貢献しました。