## プラトンのメノンの選択
メノンにおける徳の定義の探求
プラトンの対話篇「メノン」は、ソクラテスとメノンという若い貴族の対話という形式を取り、徳の本質についての探求を描いています。メノンは、ソクラテスに対し、「徳は教えられるものか、それとも生まれつきのものか」と問いかけます。
ソクラテスの反論と aporia(アポリア)
ソクラテスは、メノンの質問に直接答える代わりに、まず「徳とは何か」を明確にする必要があると主張します。メノンは、男性、女性、子供、老人など、それぞれの立場に応じた徳の例を挙げようとしますが、ソクラテスはそれらを具体的な事例に過ぎないと指摘し、普遍的な定義を求めます。
様々な定義が試みられるも、その度にソクラテスの鋭い反論によって矛盾が明らかになり、議論は堂々巡りとなります。メノンは、議論に行き詰まり、困惑と苛立ちを募らせていきます。この状態は、ギリシャ語で「アポリア」と呼ばれ、「行き詰まり」「困惑」を意味します。
想起説の導入
ソクラテスは、メノンの混乱を解消するために、魂の「想起説」を導入します。彼は、魂は輪廻転生を繰り返し、その過程で全ての知識を獲得していると主張します。そして、私たちが「学ぶ」ということは、実際には、魂に潜在的に存在する知識を「思い出す」ことであると説明します。
奴隷少年の例
ソクラテスは、想起説を証明するために、幾何学の問題を用いてメノンの奴隷少年に問答を繰り返します。少年は、最初は答えを知りませんでしたが、ソクラテスの質問に答えるうちに、自力で正解にたどり着きます。ソクラテスは、この例を挙げて、少年は自ら考えて正解を導き出したのであり、それは魂が生まれつき知識を持っている証拠だと主張します。