プラトンのティマイオスの案内
対話篇の状況
「ティマイオス」は、プラトンの後期対話篇に数えられる作品です。ソクラテス、クリティアス、ヘルモクラテス、そして表題にもなっているティマイオスという、4人の人物が登場します。
対話の舞台となるのは、ソクラテスが理想国家について語った「国家」の翌日とされています。「ティマイオス」は、「国家」で語られた理想国家の具体的なあり方を、宇宙論や自然哲学、そして人間論といった多岐にわたるテーマを通して考察していく内容となっています。
ティマイオスの宇宙論
対話の冒頭では、ソクラテスが前日の「国家」における理想国家についての議論を振り返りつつ、その具体的なあり方についてさらに考察を深めたいと提案します。
そこで、天文学に詳しいティマイオスが、宇宙の創造と構造についての壮大な物語を語り始めます。ティマイオスは、宇宙を創造した神 demiurgos の存在を仮定し、この神が eternal form を模倣することによって、秩序と調和に満ちた宇宙を創造したと説明します。
ティマイオスは、宇宙を構成する物質として、火、空気、水、土の四大元素を挙げます。そして、これらの元素が幾何学的な立体(正四面体、正八面体、正二十面体、正六面体)と対応づけられ、宇宙の秩序と美を表現していると説明します。
人間の創造と魂
ティマイオスの宇宙論に続いて、人間の創造と魂についても考察が深められます。人間は、神によって不滅の魂を与えられた存在であり、肉体は魂の器にすぎないとされます。
魂は、理性、spirit (thumos)、欲望という三つの部分から構成され、理性によって魂全体の調和を保つことが重要だと説かれます。また、人間の肉体には、視覚、聴覚、嗅覚といった感覚器官が備わっており、これらの感覚を通して外界を知覚すると説明されています。
「ティマイオス」の位置付け
「ティマイオス」は、プラトンの思想の中でも、自然哲学や宇宙論を探求した作品として知られています。
古代ギリシャの自然哲学とプラトンのイデア論を融合させた独自の宇宙観が展開されており、後世の思想家たちに多大な影響を与えました。
ただし、「ティマイオス」で展開される宇宙論や人間論は、あくまで一つの仮説として提示されたものであり、プラトン自身も断定を避けています。そのため、「ティマイオス」の内容を解釈する際には、その点を踏まえておく必要があります。