## プラトンのソクラテスの弁明の対称性
弁明における構成上の対称性
ソクラテスの弁明は、大きく分けて二つの部分から成り立っており、その間に明確な対称性が見て取れます。
前半部分では、ソクラテスは自身にかけられた嫌疑について反駁します。ここでは、デルポイの神託や、ソクラテス自身の無知の知について言及しながら、自らの哲学的活動の正当性を主張します。
後半部分では、ソクラテスは陪審員によって有罪判決を受けた後、刑罰について議論します。ここでは、ソクラテスは死を恐れないこと、むしろ不正を恐れること、そして自身の哲学的活動こそがアテネにとって有益であることを訴えます。
この二つの部分は、それぞれ「反駁」と「主張」という対照的な内容を含みながらも、ソクラテスの哲学的立場とその実践の意義を浮かび上がらせるという点で共通しています。前半では、既存の価値観や権威に疑問を投げかけるソクラテスの姿が、後半では、自らの信念に基づき、死をも恐れずに哲学を貫くソクラテスの姿が描かれていると言えるでしょう。
内容における対称性
弁明の内容を詳しく見ていくと、前半と後半で対になるようなテーマやモチーフが繰り返し登場することが分かります。
例えば、前半では、ソクラテスは、 자신을「最も賢い人間」と宣言したデルポイの神託について語ります。彼は、自分が実際には無知であることを自覚しているからこそ、神託の真意を探求するために人々と対話し、彼らが真に賢明かどうかを検証してきたのだと主張します。
一方、後半では、ソクラテスは、死後の世界への期待を表明します。そこでは、生前には出会えなかった偉大な先人たちと対話し、真実を探求し続けることができると語ります。
このように、前半では「無知の知」を自覚したソクラテスが、人間界で「真の賢者」を探求する姿が、後半では、死後の世界において、さらに深い知識と叡智を求めて探求を続けるソクラテスの姿が対比されています。
このように、「プラトンのソクラテスの弁明」は、構成と内容の両面において、緻密な対称性を持った作品と言えるでしょう。