## プラトンのゴルギアスと人間
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弁論術と正義の対立
「ゴルギアス」は、プラトンの中期対話篇に位置付けられる作品であり、ソクラテスと、当時の三大弁論家の一人ゴルギアス、その弟子ポロス、そして政治家カリクレスとの対話を描いています。
作品の中心テーマは、弁論術の本質と、それによって得られる力、そして真の幸福とは何かという点にあります。ゴルギアスは、弁論術をあらゆる事柄について人を説得できる技術として賞賛しますが、ソクラテスは、それが真の知識に基づかない、単なる技巧に過ぎないと批判します。
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快楽と善の探求
ソクラテスは、真の幸福は、魂の善、すなわち正義によってのみもたらされると主張します。彼は、不正を働くことこそが最大の悪であり、罰せられることよりも不正を行ったまま生きる方が遥かに不幸であると説きます。
一方、カリクレスは、快楽こそが人間の究極の目的であると反論します。彼は、弱肉強食の自然の法則こそが正義であり、強い者が自分の欲望を満たすことが自然の摂理だと主張します。
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魂の不死と来世の裁き
ソクラテスは、魂の不死を説き、現世での行いは死後裁かれると主張します。 彼は、不正を行った魂は来世で罰せられ、正義を貫いた魂のみが真の幸福を得ることができると説きます。
この対話を通して、プラトンは、当時のアテネ社会に蔓延していた、力と成功を重視する風潮を批判し、真の幸福とは何か、人間はどう生きるべきかという普遍的な問いを投げかけています。