## プラトンのクリトンの光と影
不正に対する抵抗
「クリトン」の中で、ソクラテスは、たとえそれが不正なものであっても、国家の法律に従うことが市民の義務であると主張しています。彼は、国家が親であり、市民はその子供であるというアナロジーを用いて、この点を説明します。親が子供に対して絶対的な権力を持つように、国家もまた市民に対して絶対的な権力を持つとソクラテスは主張します。
この主張は、法の支配の重要性を強調し、無秩序状態を防ぐためには、個人が私的な判断よりも法に従うべきであるという考えを示しています。これは、社会秩序と安定のために重要な概念と言えるでしょう。
無条件の服従の問題点
しかしながら、ソクラテスの主張には、国家の不正や腐敗の問題が考慮されていないという批判もあります。ソクラテス自身が不当な裁判によって死刑判決を受けているにもかかわらず、国家への絶対的な服従を説いている点は、矛盾していると捉えることもできます。
もし、国家が不正な法律を制定した場合、市民はそれに抵抗する権利を持たないのでしょうか。「クリトン」では、この重要な問題に対する明確な答えが提示されていません。