## ブローデルの地中海の話法
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歴史叙述の枠組み
ブローデルの『地中海』は、従来の歴史叙述の枠組みを大きく逸脱した作品として知られています。 伝統的な歴史学が政治的事件や英雄的人物に焦点を当てるのに対し、ブローデルは「長い時間」という概念を導入し、地理、気候、環境、経済、社会といった、より深層的で変化の緩やかな構造を重視しました。
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多層的な歴史記述
ブローデルは歴史を、異なる速度で変化する複数の層として捉えました。 最下層に位置するのは、ほとんど変化しない地理や環境といった「環境の時間」です。その上に、経済活動や社会構造といった、ゆっくりと変化する「社会の時間」が存在します。そして最上層に、政治的事件や人物といった「事件の時間」が位置付けられます。
ブローデルは、これらの異なる時間の層を分析することで、16世紀の地中海世界を立体的に描き出すことを試みました。 地中海という地理的条件が、人々の生活様式、経済活動、社会構造、さらには政治的動向にまで、いかに大きな影響を与えてきたのかを明らかにしようとしたのです。
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全体史としての地中海
ブローデルは、政治的な境界線にとらわれず、地中海全体を一つの歴史的 Einheit (統一体) として捉えました。 彼は、地中海世界を構成する様々な地域間の相互作用に着目し、人、物、文化、思想の活発な交流を描き出しました。
従来の歴史学では、国家や民族といった枠組みが重視されてきました。 しかしブローデルは、地中海という共通の空間を共有する人々の間に、国家や民族を超えた共通の文化や歴史が存在することに着目したのです。
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学際的なアプローチ
ブローデルは、歴史学だけでなく、地理学、経済学、社会学、人類学など、様々な学問分野の知見を総合的に活用しました。 彼は、膨大な量の史料を渉猟し、統計資料や地図、絵画などの視覚資料も積極的に用いることで、16世紀の地中海世界を多角的に分析しました。
ブローデルの学際的なアプローチは、歴史学の領域を大きく広げ、歴史をより総合的に理解する新たな視点を提供しました。 彼の影響は、歴史学にとどまらず、人文社会科学全体に及んでいます。