ブローデルの地中海の対極
ブローデルの地中海と対比される歴史観
フェルナン・ブローデルの著書『地中海』は、16世紀の地中海世界を舞台に、従来の歴史叙述では見過ごされてきた長期持続的な構造や、地理的環境と歴史の関係に焦点を当てた革新的な歴史書として知られています。
政治・軍事史を中心とした従来の歴史叙述
ブローデルの歴史観と対比されるのが、政治史や軍事史を中心とした従来の歴史叙述です。 政治上の出来事や戦争、支配者層の動向を歴史の中心に据え、それらを時系列に沿って記述していく手法は、歴史学における伝統的な方法論でした。
代表的な歴史書:『ローマ帝国衰亡史』
エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』は、政治・軍事史を中心とした歴史叙述の代表例として挙げられます。 全6巻にも及ぶ大著で、ローマ帝国の繁栄から滅亡までを、主に政治・軍事的な側面から詳細に描き出しています。
ブローデルとの対比
ブローデルは、従来の歴史叙述では見過ごされてきた、日常生活や経済活動、文化交流といった側面に光を当て、歴史を多層的に捉えることを提唱しました。 一方、ギボンのような政治・軍事史中心の歴史書は、歴史を支配者層や政治的事件といった限られた視点から捉えていると言えるでしょう。
多様な歴史観の共存
ブローデルの歴史観は、従来の歴史叙述とは異なる視点をもたらし、歴史学に大きな影響を与えました。 しかし、だからといって政治・軍事史中心の歴史観が完全に否定されるわけではありません。 歴史は多面的であり、様々な角度からの分析が可能であることを理解することが重要です。