## ブローデルの地中海の入力と出力
フェルナン・ブローデルの著作、「地中海」は、地中海という地理的空間を舞台に、16世紀における歴史、社会、文化、経済などを包括的に分析した、壮大な歴史学書です。
この著作における「入力」と「出力」を具体的に特定することは容易ではありません。なぜなら、ブローデルは伝統的な歴史叙述の枠組みを超え、多様な要素が相互に作用し合う複雑なネットワークとして地中海世界を捉えているからです。
しかし、あえて「入力」と「出力」という観点から考察するならば、以下の要素が挙げられます。
### 入力
* **地理的条件:** 地中海という閉鎖性が高い海域、温暖な気候、島嶼や半島が織りなす複雑な地形、山がちな地勢などが、人々の生活様式、交易ルート、政治的分割などに大きな影響を与えています。
* **歴史的背景:** 古代ギリシャ・ローマ文明、ビザンツ帝国、イスラム帝国など、地中海世界は様々な文明が興亡を繰り返してきた歴史的舞台です。これらの文明が残した遺産は、16世紀の地中海世界にも色濃く受け継がれています。
* **経済活動:** 農業、牧畜、漁業といった第一次産業に加え、東西交易の中継地としての役割を担う商業活動、ヴェネツィアやジェノヴァといった都市国家による手工業生産など、多様な経済活動が展開されています。
* **宗教と文化:** キリスト教、イスラム教という二大宗教が共存する一方で、地域ごとに独自の文化や伝統が育まれています。ユダヤ教徒の存在も無視できません。これらの宗教や文化は、相互に影響を与え合い、複雑な様相を呈しています。
### 出力
* **地中海世界全体の構造と変化:** ブローデルは、地中海という地理的空間を一つのまとまりとして捉え、その内部における諸要素の相互作用によって、全体としての構造と変化が規定されると考えました。
* **多様な地域間の相互作用:** 東西交易の活発化、オスマン帝国の進出など、外部からの影響も受けながら、地中海世界は常に変化を続けています。ブローデルは、この動的なプロセスを、様々な地域間の相互作用として描き出しています。
* **「長い時間」という概念の提示:** ブローデルは、政治や事件といった短期的変化ではなく、地理的条件や気候、生活様式といった「長い時間」が、歴史の根底に流れ続けていると考えました。
* **歴史学における新たな方法論の提示:** ブローデルの「地中海」は、従来の政治史中心の歴史学から脱却し、地理学、経済学、社会学、文化人類学などの知見を取り入れた、総合的な歴史叙述を目指しました。
### まとめ
ブローデルの「地中海」は、一筋縄ではいかない複雑な著作であり、「入力」と「出力」を明確に区別することは困難です。 しかし、上記の要素を手がかりに読み進めることで、ブローデルの壮大な歴史観を理解する一助となるでしょう。