フローベールの感情教育の原点
フローベールの私小説的体験
フローベール自身の青年期の失恋体験が、
「感情教育」の重要な原点として挙げられます。
彼は1846年、既婚女性エリーザ・シュレジンガーと恋に落ちますが、
身分違いもあり、成就することはありませんでした。
この苦い経験は、フレデリックとマダム・アルヌーの関係に色濃く反映されており、
主人公が抱く理想と現実のギャップ、
叶わぬ恋に翻弄される姿は、
フローベール自身の青春時代の投影と言えます。
1848年二月革命の影響
「感情教育」の執筆背景には、
1848年の二月革命とその後の社会情勢が大きく影響しています。
フローベール自身もこの革命に立ち会い、
市民たちの熱狂と挫折を目の当たりにしました。
小説内では、フレデリックを含む登場人物たちが革命の渦に巻き込まれ、
それぞれの思惑や立場から行動を起こす様子が描かれています。
しかし、彼らの多くは革命の熱狂に流されるだけで、
真に社会を変革することなく、挫折を味わいます。
これは、フローベールが革命後に台頭したブルジョワジーの
利己主義や政治への無関心を批判的に捉えていたことを示唆しています。
19世紀フランス社会の観察と描写
フローベールは「感情教育」において、
当時のフランス社会を構成する様々な階層の人々を
克明に描写しています。
上流階級の退廃的な生活、
芸術家や学生たちの熱狂と挫折、
貧困層の厳しい現実など、
当時の社会における光と影が
リアリティを持って描き出されています。
彼はこれらの描写を通して、
社会全体の虚偽や欺瞞を浮き彫りにしようと試みています。