## フローベールの感情教育と時間
時間の流れと物語構造
「感情教育」は、1848年の二月革命から第二帝政下の1850年代後半までの時代を背景に、主人公フレデリック・モローの青年期を描いています。物語の時間経過は必ずしも均等ではなく、ある時期は詳細に描写され、別の時期は省略されたり、断片的に描かれたりします。
例えば、フレデリックとアルヌ夫人との出会いや、彼らの関係の始まりは詳細に描写されます。一方、フレデリックが法律の勉強に励む時期や、彼が新聞記者として働く時期は比較的短くまとめられています。
このような時間の流れの操作は、フレデリックの感情の動きや、彼が経験する社会的な出来事の重要性を強調するために用いられています。
反復されるモチーフと時間の経過
作中では、いくつかの出来事やモチーフが繰り返し現れ、時間の経過とともに変化していく様子が描かれます。
例えば、フレデリックとアルヌ夫人の逢瀬は、物語の異なる時期に何度か繰り返されます。最初の逢瀬は、フレデリックの情熱とアルヌ夫人のためらいが交錯する、緊張感に満ちたものです。しかし、時間が経つにつれて、彼らの関係はマンネリ化し、かつての情熱は失われていきます。
このような反復されるモチーフは、時間の経過が人間の感情や関係性にどのような影響を与えるのかを浮き彫りにしています。
歴史的時間と個人的な時間
「感情教育」では、1848年の二月革命やその後の社会的な混乱が、フレデリックの個人的な人生と密接に関係しながら描かれています。
フレデリックは、革命の熱狂に一時的には身を投じますが、結局は政治的な活動に幻滅し、個人的な幸福を追求することを選びます。彼のこの選択は、当時のフランス社会における政治と個人の関係、理想と現実の対立を象徴していると言えるでしょう。
このように、「感情教育」は、歴史的な時間と個人的な時間の複雑な関係を描き出すことによって、19世紀フランス社会の現実と人間の感情の普遍性を浮かび上がらせています。