フローベールのサランボーを読む
サランボーについて
「サランボー」は、ギュスターヴ・フローベールによって1857年に発表された歴史小説です。舞台は紀元前3世紀、第一次ポエニ戦争後のカルタゴで、傭兵たちが反乱を起こす様子を描いています。主人公はカルタゴの将軍ハミルカル・バルカの娘サランボーで、物語は彼女と傭兵軍の首領マトーとの関係を中心に展開します。
歴史的背景
小説は史実である傭兵戦争を題材としていますが、フローベールは史料を独自に解釈し、歴史的事実とフィクションを織り交ぜて物語を構築しています。そのため、作中に描かれたカルタゴの風俗や習慣、宗教儀式などは、必ずしも歴史的に正確なものとは限りません。
文体と描写
フローベールは「客観性」を重視した作家として知られており、「サランボー」においても、登場人物の内面を直接描写するのではなく、彼らの行動や周囲の状況を描くことで、読者に解釈を委ねる手法を用いています。また、色彩豊かで感覚的な描写を駆使することで、古代カルタゴの異国情緒あふれる世界を鮮やかに描き出しています。
テーマ
「サランボー」は、愛と暴力、欲望と宗教、文明と野蛮など、さまざまなテーマが交錯する作品です。フローベールは、人間存在の本質や、人間の持つ残酷さ、そして歴史の循環といった普遍的な問題を、古代カルタゴを舞台に描き出しています。