Skip to content Skip to footer

フローベールのサランボーに影響を与えた本

フローベールのサランボーに影響を与えた本

ポリュビオスの歴史

ギュスターヴ・フローベールの歴史小説『サランボー』は、古代カルタゴを舞台に、傭兵の反乱とその後を描いた作品です。この小説は、その鮮やかな描写と歴史的なディテールへのこだわりで高く評価されていますが、その制作においては様々な資料が参考にされました。中でも、古代ギリシャの歴史家ポリュビオスの『歴史』は、『サランボー』に大きな影響を与えた作品として知られています。

ポリュビオスは紀元前2世紀に活躍した歴史家で、その生涯は『サランボー』の舞台となった第一次ポエニ戦争(紀元前264年 – 紀元前241年)の時代と重なります。彼はローマに人質として送られた経験を持ち、ローマとカルタゴの両方を間近で見つめる機会を得ました。彼の主著である『歴史』は、ローマの勃興と地中海世界への拡大を、独自の視点と詳細な記述で描き出したものです。

『サランボー』への影響

フローベールは『サランボー』の執筆にあたり、歴史的な正確さを追求しました。彼はカルタゴの歴史や文化に関する膨大な資料を読み込み、その中にはポリュビオスの『歴史』も含まれていました。ポリュビオスの著作は、フローベールに第一次ポエニ戦争に関する詳細な知識を提供し、当時の軍事戦略や政治状況、社会風俗を理解する上で重要な役割を果たしました。

特に、ポリュビオスが詳細に描写した傭兵の反乱に関する記述は、『サランボー』の主要なプロットである傭兵戦争の描写に大きな影響を与えました。フローベールは、ポリュビオスの記述を参考に、傭兵たちの動機や行動、カルタゴ社会との関係を深く掘り下げ、リアリティあふれる物語を構築することに成功しました。

歴史描写の深み

ポリュビオスの影響は、『サランボー』の細部にまで及んでいます。例えば、作中に登場する戦闘シーンや軍事用語、カルタゴの街並み、人々の服装などは、ポリュビオスの記述を参考に再構築されたものです。フローベールは、ポリュビオスの客観的で詳細な記述を参考に、古代カルタゴの世界を鮮やかに描き出し、読者を遠い過去へと誘います。

ポリュビオスの『歴史』は、『サランボー』の単なる資料にとどまらず、その歴史描写の深みとリアリティに大きく貢献した作品と言えるでしょう。フローベールは、ポリュビオスの視点を借りることで、古代カルタゴの興亡を、人間ドラマとして描き出すことに成功しました。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5