フロイトの精神分析入門の表象
表象
フロイトは、人間の精神生活を理解する上で「表象」の概念を重視しました。表象とは、外界の対象や出来事、あるいは自身の内的状態が、感覚器官や意識を通して、心の中に取り込まれ、記憶の痕跡として保持されたものです。
表象は、それが直接的に意識にのぼっている場合と、そうでない場合があります。意識にのぼっている表象は「知覚」と呼ばれ、過去の経験に基づいて解釈されます。一方、意識にのぼっていない表象は、無意識の領域に蓄えられます。
無意識の表象は、直接的に意識化されることはありませんが、夢や神経症症状、言い間違いなどを通して、間接的にその影響を及ぼすとフロイトは考えました。
フロイトは、表象を「観念」と「 affects (情動)」の複合体として捉えました。観念とは、対象や出来事の具体的なイメージや概念を指し、情動は、それらに付随する快・不快、喜び・悲しみといった感情的な要素を指します。
表象は、心的過程において重要な役割を果たします。例えば、思考は表象の操作を通して行われ、欲求は特定の対象に対する表象と結びつくことで生じます。
精神分析の治療においては、患者が抱える問題の根底にある無意識的な表象を、自由連想や夢分析などの手法を用いて意識化することが重要になります。