フロイトのヒステリー研究の関連著作
ジャン＝マルタン・シャルコー『神経症に関する講義』(Leçons sur les maladies du système nerveux) (1878-1893)
シャルコーは19世紀後半のパリで活躍した神経学者であり、フロイトが師事した人物の一人です。彼は神経症、特にヒステリーとてんかんの研究で知られています。シャルコーは、それまで精神的なものと考えられていたヒステリーには、神経系に基礎があると主張しました。
シャルコーは、催眠を用いてヒステリー患者の症状を誘発したり消失させたりすることができました。彼はまた、ヒステリー患者は特定の身体症状を示すことを観察し、それを「ヒステリー徴候」と呼びました。シャルコーの研究は、フロイトのヒステリーに対する考え方に大きな影響を与えました。
ヨセフ・ブロイアー『ヒステリー研究』(Studien über Hysterie) (1895)
ブロイアーは、フロイトの同僚であり友人であったウィーンの医師です。彼は、後に「アンナ・O」として知られることになるベルタ・パッペンハイムというヒステリー患者を治療しました。ブロイアーは、パッペンハイムに催眠をかけ、彼女の症状について話させることで、症状が軽減することを発見しました。彼はこの治療法を「談話療法」と呼びました。
『ヒステリー研究』は、ブロイアーとフロイトの共同研究の成果をまとめたものです。この本の中で、彼らはヒステリーの原因が抑圧されたトラウマ的な記憶にあると主張し、「精神分析」の基礎となる考え方を示しました。
ピエール・ジャネ『精神自動症』(L’Automatisme psychique) (1889)
ジャネは、フランスの心理学者であり、ヒステリーやその他の精神障害の研究で知られています。彼は、催眠や自動筆記などの方法を用いて、無意識の精神活動を研究しました。ジャネは、「精神自動症」という概念を提唱し、ヒステリーなどの精神障害は、意識から分離された精神活動によって引き起こされると考えました。
ジャネの研究は、フロイトの無意識の概念に影響を与えたと考えられています。しかし、フロイトはジャネの理論のいくつかには同意せず、独自の理論を展開しました。
これらの著作は、フロイトがヒステリーについて独自の理論を構築する上で重要な役割を果たしました。 フロイトはこれらの先行研究を批判的に検討し、自身の臨床経験と結びつけながら、精神分析という新しい学問を創り上げていきました。