フォークナーのアブサロム、アブサロム!の仕組み
登場人物と語り手
「アブサロム、アブサロム!」は、南北戦争以前のミシシッピ州を舞台に、トマス・サトペンとその一族の興亡を描いた物語です。複雑な構成を持つこの小説は、複数の語り手によって語られます。
* **ローザ・コールドフィールド:** 物語は1909年、孤独な老婦人となったローザの回想から始まります。彼女はサトペン家の歴史に深く関わっており、その視点から物語の一端を担います。
* **クエンティン・コンプソン:** ローザの話を聞き、サトペン家の謎に迫ろうとする青年。彼自身の家族の歴史もサトペン家と複雑に絡み合っています。
* **シュリーヴ・マッキャノン:** ハーバード大学でクエンティンのルームメイト。クエンティンからサトペン家の話を聞き、彼と共にその謎を解き明かそうとします。
* **ジェイソン・コムソン3世:** クエンティンの祖父で、南北戦争に従軍した経験を持つ人物。サトペン家の歴史を知る数少ない生き残りとして、クエンティンに断片的な情報を提供します。
* **ミセス・コンプソン:** クエンティンの祖母。ジェイソン3世の妻で、サトペン家についてある程度の知識を持っています。
時間と構造
小説の時間の流れは、現在(1909年と1910年)と過去(主に1833年から1865年)を複雑に行き来します。各語り手はそれぞれの視点と時間軸から物語を語り継ぎ、断片的な情報が少しずつ明らかになっていきます。
物語は大きく分けて以下の3つの時間軸で展開されます。
1. **1909年9月:** ローザがクエンティンにサトペン家の話を語り始めます。
2. **1910年1月:** クエンティンがハーバード大学でシュリーヴにサトペン家の話をします。
3. **1833年〜1865年:** サトペン家の歴史が、主にローザ、クエンティン、ジェイソン3世の回想を通して語られます。
語り口と視点
各語り手はそれぞれ独自の語り口と視点を持っています。
* ローザは感情的で主観的な語り口で、サトペン家への愛憎入り混じった複雑な感情を吐露します。
* クエンティンは、ローザの話に翻弄されながらも、サトペン家の真実を知ろうと苦悩します。
* シュリーヴは、外部の視点から客観的にサトペン家の物語を分析し、独自の解釈を加えていきます。
聖書のモチーフ
「アブサロム、アブサロム!」というタイトルは、旧約聖書の「サムエル記」に登場するアブサロムの物語を暗示しています。アブサロムは、父であるダビデ王に反逆を起こし、悲劇的な死を遂げる人物です。
小説内には、アブサロムの物語以外にも、聖書からの引用や暗示が多数登場します。これらのモチーフは、サトペン家の物語に深みと普遍性を与えています。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。