フォークナーのアブサロム、アブサロム!に関連する歴史上の事件
アメリカ南北戦争とその影響
『アブサロム、アブサロム!』は、南北戦争とその後のレコンストラクション時代を背景に、サトペン家の興亡と悲劇を描いています。フォークナー自身、ミシシッピ州出身であり、彼の家族は南北戦争やレコンストラクション時代に翻弄された経験を持っています。
小説では、南北戦争がサトペン家の運命を大きく左右する出来事として描かれています。戦争によってプランテーションは荒廃し、サトペン家の経済的な基盤は崩壊します。また、戦争は登場人物たちの精神にも深い傷跡を残し、彼らの行動や人間関係に大きな影響を与えます。
奴隷制と人種差別
奴隷制と人種差別は、『アブサロム、アブサロム!』の重要なテーマです。トマス・サトペンは、ハイチで奴隷を使って砂糖プランテーションを築き上げた過去を持ちます。彼はその後、ミシシッピに移住し、綿花プランテーションを経営しますが、そこでも奴隷制を当然のこととみなしています。
小説では、奴隷制がサトペン家の崩壊に繋がったことが示唆されています。トマス・サトペンの黒人との間に生まれた息子チャールズ・ボンは、彼の異母兄弟であるヘンリーと親密な関係を築きますが、人種差別の壁に阻まれ、悲劇的な結末を迎えます。また、レコンストラクション時代に入っても、黒人に対する差別や偏見は根強く残り、社会に暗い影を落としています。
西部開拓
西部開拓は、『アブサロム、アブサロム!』の背景の一つとして描かれています。トマス・サトペンは、より良い生活を求めてハイチからミシシッピに移住し、広大な土地を手に入れてプランテーションを築きます。彼の野心的な姿は、当時のアメリカ社会に蔓延していたフロンティア精神を象徴しています。
しかし、西部開拓は同時に、ネイティブ・アメリカンから土地を奪い、彼らを迫害する歴史でもありました。小説では、トマス・サトペンがネイティブ・アメリカンの土地を不当に手に入れたことが示唆されており、西部開拓の負の側面が描かれています。