フィヒテの全知識学の基礎の関連著作
カント「純粋理性批判」
フィヒテの哲学は、カント哲学を批判的に継承したものとして位置づけられます。「全知識学の基礎」を理解する上で、カントの主著である「純粋理性批判」は避けて通れません。カントはこの著作で、人間の理性には限界があり、物事を認識する能力は感性と悟性の協働によって成り立っていると主張しました。
私たちは物事を「ありのまま」に認識することはできず、感性を通して得られた経験を悟性にある「カテゴリー」という概念枠組みによって整理し、初めて認識が可能となります。そして、このカテゴリーは、時間や空間、因果関係といった、人間の認識のあり方を規定する「アプリオリ」な概念です。
しかし、カントはこのような認識能力の枠組みの外にある「物自体」については、認識不可能であるとしました。この点は、理性によって世界の全体像を把握しようとしたフィヒテにとって、乗り越えるべき課題となりました。