## フィヒテの全知識学の基礎の選択
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フィヒテの「選択」概念
フィヒテ哲学において、「選択」は認識論的な意味だけでなく、存在論的な、そして倫理的な意味も持ちます。まず、フィヒテの知識学の基礎となる「自我」は、自らを無条件に設定する活動体として理解されます。この自己設定こそが、フィヒテにおいて「選択」が持つ最初の意味です。
しかし、自我は純粋な活動であると同時に、自らに限界を与えることによってのみ自己意識を獲得します。この限界を与える活動もまた、自我の「選択」によるものです。自我は、自らを限定する「非我」を自らに対置することによって、初めて自己を意識することができるのです。
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「選択」と「 striving 」
フィヒテは、自我と非我のこの関係性を、「 striving 」という概念を用いて説明します。自我は、常に非我を克服し、自己を無限に拡張しようとします。しかし、非我を完全に消滅させてしまうと、自我は自己意識の基盤を失ってしまうため、非我を完全に消滅させることはできません。
このため、自我は永遠に非我を克服しようと「選択」し続ける、「 striving 」の状態に置かれることになります。この「 striving 」こそが、フィヒテ哲学において、知識、道徳、歴史のすべてを駆動する根本原理となるのです。