Skip to content Skip to footer

フィヒテの全知識学の基礎の技法

フィヒテの全知識学の基礎の技法

###

フィヒテの全知識学の基礎における概念構築の技法

フィヒテの『全知識学の基礎』(1794年)は、自己意識の経験を出発点として、体系的な哲学を構築することを目指した著作です。フィヒテは、この試みを成功させるために、独自の哲学的方法を採用しています。それは、伝統的な論理学や経験科学の枠組みを超えた、**超越論的**な方法です。

フィヒテの方法は、**知的直観**と**概念構築**という二つの主要な要素から成り立っています。

1. **知的直観**: フィヒテは、人間の自己意識の根底には、直接的で即自的な把握、すなわち「知的直観」が存在すると主張します。この直観は、感覚的な経験や論理的な推論とは異なる、純粋に理性的な把握であり、自己意識の根源的な活動として捉えられます。

2. **概念構築**: 知的直観によって把握された自己意識の活動は、そのままでは哲学的な分析の対象となりません。そこでフィヒテは、知的直観の内容を明確化し、体系化するために、「概念構築」という方法を用います。

###

概念構築における三段階の弁証法

概念構築は、三つの段階からなる弁証法的プロセスを通じて行われます。

1. **テーゼ**: まず、自己意識の活動が、ある特定の規定のもとで捉えられます。この最初の段階は、「テーゼ」と呼ばれます。

2. **アンチテーゼ**: 次に、テーゼで設定された規定は、自己意識自身の活動によって否定されます。この否定的な段階は、「アンチテーゼ」と呼ばれます。

3. **ジンテーゼ**: 最後に、テーゼとアンチテーゼの対立は、より高次の段階で統合されます。この統合的な段階は、「ジンテーゼ」と呼ばれます。

フィヒテは、この三段階の弁証法を繰り返すことによって、自己意識の活動から、より複雑で高次の概念を導き出していきます。重要なのは、フィヒテの弁証法は、単なる論理的な矛盾の解消を目指すものではなく、自己意識の活動そのものを動力とする、動的なプロセスであるということです。

例えば、『全知識学の基礎』の冒頭で展開される「自我」の導出は、この弁証法を用いた概念構築の好例です。

1. まず、「自我」は、「自我は自我である」というテーゼにおいて、自己同一的なものとして規定されます。
2. しかし、この規定は、同時に「自我」を「非自我」から区別することを含意しており、自己同一性と同時に「非自我」への関係性を生み出すことになります。これがアンチテーゼです。
3. そこで、「自我」は、「非自我」を設定する活動を通してのみ、自己同一性を確立するという、より高次の段階へと移行します。これがジンテーゼです。

このように、フィヒテの概念構築は、知的直観と三段階の弁証法を組み合わせることで、自己意識の活動から、体系的な知識を導き出そうとする、野心的な試みです。

Amazonで詳細を見る

Leave a comment

0.0/5