## フィヒテの全知識学の基礎の分析
フィヒテの思想的背景
ヨハン・ゴットリープ・フィヒテ（1762-1814）は、ドイツ観念論の重要な哲学者の一人であり、特にカント哲学を批判的に継承し、独自の体系を構築したことで知られています。フィヒテは、カントが「物自体」を認識の限界として残したことに不満を抱き、自己意識の働きによって世界を構成しようとする立場、すなわち「超越論的主観主義」を主張しました。
「全知識学の基礎」の概要
「全知識学の基礎」（1794年）は、フィヒテの主著の一つであり、彼の哲学体系の基礎をなす著作です。この著作でフィヒテは、一切の知識の根底にある第一原理を明らかにすることを目指しました。彼は、この第一原理を「自我」の働きであるとし、自我が自己自身を規定することによって、世界についての認識も可能になると考えました。
三つの根本命題
フィヒテは、「全知識学の基礎」において、知識の基礎となる三つの根本命題を提示します。
1. **「自我は自我である」**：これは、自我が自己自身と同一であるという、自明な命題です。フィヒテは、この命題を一切の思考の出発点と見なします。
2. **「自我は非自我をpositする」**：自我は、自己自身と異なるもの、すなわち「非自我」を対置することによって、自己自身を規定します。この非自我は、外部世界や感覚的な経験などを指します。
3. **「限定された自我と限定された非自我」**：自我と非自我は、互いに限定し合う関係にあります。自我は非自我によって限定され、非自我もまた自我によって限定されます。
知識の構築
フィヒテは、これらの三つの根本命題を出発点として、演繹的な推論によって、様々な知識を導き出そうとしました。彼は、自我が非自我をpositするという働きを繰り返すことによって、世界についての認識が次第に豊かになっていくと考えました。
「全知識学の基礎」の意義
「全知識学の基礎」は、フィヒテの哲学体系の基礎をなす重要な著作であると同時に、ドイツ観念論の発展にも大きな影響を与えました。特に、シェリングやヘーゲルは、フィヒテの思想を批判的に継承し、独自の体系を展開しました。