フィッツジェラルドの夜はやさしの構成
構成の特徴
「夜はやさし」は、大きく分けて二部構成と捉えることができます。第一部と第二部では、語り手、時間、場所が変化し、物語の様相が大きく変化します。
第一部
第一部は、1920年代半ばの南フランスのリヴィエラが舞台です。語り手は、若く希望に満ちたアメリカ人医師のディック・ダイヴァーです。彼は、裕福な精神病患者のニコール・ウォーレンと恋に落ち、結婚します。ニコールは、父親からの性的虐待という暗い過去を持つ、美しくも傷ついた女性です。ディックは、精神科医としての知識と愛情をもってニコールを献身的に支え、二人は幸せな結婚生活を送っているように見えます。
この部分は、ディックとニコールが出会い、恋に落ち、結婚するまでが、主にディックの視点から描かれています。美しい風景と華やかな社交界を背景に、一見完璧に見える二人の関係が、ニコールの精神状態の不安定さとともに、次第にかげりを見せていく様子が丁寧に描写されています。
第二部
第二部は、数年後のパリやスイスが舞台となります。語り手は、ディックとニコールの友人である映画監督のローズマリー・ホイトに入れ替わります。ニコールの精神状態は悪化し、ディックは精神的な疲労とアルコール依存に苦しんでいます。ローズマリーは、ディックに惹かれながらも、彼らの関係の複雑さに戸惑います。
この部分は、第一部で描かれた幸せな時代の終焉と、ディックの凋落が描かれます。ニコールは回復し、自立に向かって歩み始めますが、皮肉なことに、ディックは精神的に疲弊し、医師としての将来も閉ざされてしまいます。
時間
時間軸は、必ずしも時系列順にはなっていません。回想やフラッシュバックが効果的に用いられ、登場人物たちの過去が徐々に明らかになっていきます。