## ピグーの厚生経済学の面白さ
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経済学に倫理を持ち込んだ先駆者
アルフレッド・マーシャルの系譜に連なる経済学者として知られるピグーは、主著『経済学原理』の中で、経済厚生論を体系的に展開しました。彼は、経済学が究極的に目指すべきは「人間の幸福の増進」であるという強い倫理観に基づき、政府の介入によって所得格差を是正し、社会全体の厚生を高めるべきだと主張しました。
当時、経済学は「価値中立」の立場を重視する傾向にありました。このような中で、ピグーのように倫理的な側面を正面から取り上げ、積極的に政府の役割を論じたことは、大きなインパクトを与えました。彼の視点は、後の経済学、特に公共経済学や福祉経済学の発展に大きな影響を与え、現代の社会保障制度の基礎を築く上でも重要な役割を果たしました。
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功利主義に基づく厚生概念
ピグーは、ベンサムの功利主義の影響を受け、「厚生」を「経済的福祉」と定義し、それを貨幣的な尺度で測定できると考えました。彼は、人々の効用は所得の増加とともに逓減していくという「限界効用逓減の法則」を前提に、所得の不平等が大きいほど社会全体の厚生は低下すると主張しました。
具体的には、富裕層から貧困層へ所得を再分配することで、富裕層の効用はわずかに減少し、貧困層の効用は大きく増加するため、社会全体の厚生は増加するという論理です。この考え方は、累進課税や社会福祉制度など、現代の社会政策の根拠となっています。
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外部経済効果への着目
ピグーは、「外部経済効果」という概念を明確に提示した経済学者としても知られています。外部経済効果とは、ある経済主体の活動が、市場を通さずに他の経済主体に影響を与える現象のことです。彼は、工場の排煙による大気汚染のような「外部不経済」は、社会全体の厚生を損なうため、政府が課税などの手段を用いて規制すべきだと主張しました。
逆に、教育や技術開発のような「外部経済」は、社会全体の厚生を高める効果を持つため、政府が補助金などの政策によって積極的に促進すべきだと主張しました。彼の外部経済効果に関する分析は、環境問題や科学技術政策など、現代経済学の重要なテーマを考える上で欠かせない視点となっています。
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