ピグーの厚生経済学の関連著作
アルフレッド・マーシャル – 「経済学原理」 (1890年)
マーシャルの「経済学原理」は、近代経済学の基礎を築いた記念碑的作品であり、ピグーの厚生経済学にも大きな影響を与えました。特に、消費者余剰の概念や限界効用理論は、ピグーが福祉を測定する際に用いた重要な要素です。マーシャルは、経済学の目的は人間の福祉の向上にあると明言しており、この視点はピグーの思想にも色濃く反映されています。
本書は需給のメカニズム、生産費用、分配論など幅広いテーマを網羅しており、部分均衡分析と完全競争市場を重視したアプローチが特徴です。ピグーはマーシャルの弟子であり、本書で展開された理論を発展させる形で独自の厚生経済学を構築していきました。
ヘンリー・シジウィック – 「倫理学の方法」 (1874年)
シジウィックはイギリスの倫理学者であり、功利主義の伝統を受け継ぎながら独自の倫理体系を構築しました。彼の主著である「倫理学の方法」は、道徳哲学の古典として知られており、ピグーの倫理的基盤に大きな影響を与えました。
シジウィックは、人間の行為は最大多数の最大幸福を実現するように導かれるべきだと主張し、功利主義的な視点を倫理の中心に据えました。ピグーはシジウィックの倫理思想を経済学に応用し、政府の介入によって社会全体の福祉を高めることができると考えました。
ジョン・スチュアート・ミル – 「経済学原理」 (1848年)
ミルの「経済学原理」は、古典派経済学の集大成ともいえる著作であり、ピグーの思想にも大きな影響を与えました。特に、ミルの功利主義に基づく福祉の概念や、政府の役割に関する議論は、ピグーの厚生経済学の重要な先駆となりました。
ミルは、自由放任主義を基本としながらも、貧困や教育などの社会問題に対しては政府の介入を積極的に認めるべきだと主張しました。ピグーはミルの思想を受け継ぎ、市場メカニズムの限界を克服し、社会正義を実現するために政府が積極的に介入すべきだと考えました。