## ピグーの厚生経済学の力
### 経済福祉への貢献
アルフレッド・ピグーは、その主著『経済福祉論』において、政府の介入による社会福祉の増進を主張し、厚生経済学に多大な影響を与えました。彼は、限界効用概念を用いて所得の不平等が社会全体の効用を低下させることを示し、所得再分配の必要性を論じました。
### 外部経済効果の分析
ピグーは、市場メカニズムだけでは適切に処理できない外部経済効果（外部経済、外部不経済）の概念を明確化しました。彼は、工場の排煙による大気汚染などの外部不経済に対しては課税によって、教育や技術革新などの外部経済に対しては補助金によって、政府が介入することで社会全体の厚生を高められると主張しました。
### 公共財の議論
ピグーは、市場メカニズムでは供給が難しい公共財の概念を提示しました。彼は、国防や治安維持、灯台などの公共財は、消費の非競合性と排除不可能性という特性を持つため、市場では適切に供給されないと指摘し、政府による供給の必要性を論じました。
### 政策提言への影響
ピグーの厚生経済学は、その後の経済政策、特に福祉国家政策に大きな影響を与えました。彼の所得再分配や政府による市場介入に関する主張は、累進課税制度や社会保障制度の導入、環境規制の強化など、多くの政策に反映されています。
### 批判と限界
ピグーの厚生経済学は、その功績の一方で、いくつかの批判も受けています。主な批判としては、個人間の効用の比較可能性の問題、政府の市場介入による非効率性の問題、自由主義的な観点からの政府の役割の拡大への懸念などがあります。