## ヒュームの人間機械論に関連する歴史上の事件
### 18世紀ヨーロッパにおける科学革命と啓蒙主義の影響
ヒュームが活躍した18世紀のヨーロッパは、科学革命と啓蒙主義の真っ只中にありました。ニュートンによる古典力学の体系化や、コペルニクス、ガリレオらによる地動説の提唱など、それまでの常識を覆すような科学的発見が相次ぎました。これらの発見は、宇宙の秩序や自然法則に対する人々の認識を大きく変え、理性に基づいた合理的な思考を重視する風潮を生み出しました。
### デカルトの機械論と心身二元論の影響
ヒュームの思想に大きな影響を与えた人物の一人に、フランスの哲学者ルネ・デカルトが挙げられます。デカルトは、世界を「物質」と「精神」という根本的に異なる二つの実体から成り立つものとし、物質世界を機械のように動くものと捉える「機械論」を提唱しました。 心身二元論は、精神と物質を別々の実体として扱い、相互作用を説明するのが困難でした。ヒュームはデカルトの心身二元論を批判し、人間の精神も物質世界の法則に従うという立場から、人間を複雑な機械と見なす「人間機械論」を展開しました。
### フランス唯物論の台頭と論争
18世紀フランスでは、人間を物質の集合体とみなし、精神も物質の運動によって説明しようとする唯物論が台頭しました。ラ・メトリの『人間機械論』は、人間の精神活動を含め、あらゆる生命現象を機械の原理によって説明できると主張し、大きな議論を巻き起こしました。ヒューム自身は、フランス唯物論のような極端な機械論には与していませんでしたが、人間の精神を物質的なプロセスから切り離して考えることはできないという点で、唯物論と共通する側面を持っていました。
### 産業革命の萌芽と自動人形の登場
18世紀後半から19世紀にかけて、イギリスでは産業革命が始まり、機械による生産活動が急速に発展しました。それと同時に、精巧な動きをする自動人形が開発され、人々の間で大きな話題を呼びました。自動人形の存在は、人間と機械の境界線を曖昧にするものであり、「人間とは何か」という根源的な問いを改めて突きつけることになりました。ヒュームの人間機械論は、このような時代背景の中で、人間と機械の関係について考える上での重要な視点を提供しました。